Lovecraft at Last!

 2010年11月15日発行の東京創元社メールマガジンにて、やっとというべきか、ようやくというべきか、「2011年1月以降の刊行予定分」として待ちに待った新刊案内が告知されました。

◇『クトゥルー神話全書』 リン・カーター/朝松健監訳・竹岡啓訳(四六判並製)
ラヴクラフトの生涯を追って詳細に紹介。高名な研究書ついに邦訳。

 この日記でも幾度か取りあげ、出る出る詐欺などとの誹りも受けたリン・カーター『クトゥルー神話全書』が、ようやく店頭に並ぶようです。森瀬も巻末資料の作成、原著の誤謬指摘などの形で協力させていただきました。
 原著"Lovecraft: A Look Behind the Cthulhu Mythos"の刊行は1972年。実に40年近く前の評伝です。刊行時点で公表されていなかった資料、明らかにされていなかった事項も数多く、カーターの思いこみや勘違いに基づく事実誤認も少なからず含まれるとはいえ(訳注でフォローされています)、「クトゥルー神話」なるものが形成されていく過程を理解する上での基礎資料中の基礎資料です。この本が刊行されていなかったということひとつをとっても、日本は数十年分の遅れをとっていた−−とは言い過ぎかも知れませんが、ともあれ大変に喜ばしいことです。森瀬としても、本書の刊行(当初は昨年5月発売予定でした)を待って出すのを差し控えていたあれやこれやのネタがありますので、ようやくスタートラインに立つことができるという感じ。
 東京創元社さんのクトゥルー神話ものといえば、この後にも『クトゥルー神話ダークナビゲーション』で紹介したドナルド・ワンドレイの"The Web of Easter Island"の邦訳(これも2007年には出るという話でした)、タイタス・クロウ・サーガの続刊などが控えている、はず。首をながーくして、お待ち致します!

Lovecraft: A Look Behind the Cthulhu Mythos

Lovecraft: A Look Behind the Cthulhu Mythos