2011-01-01から1年間の記事一覧

[お仕事] 『ゲームシナリオのためのSF事典』(ソフトバンククリエイティブ)

まず最初に、質問させていただきます。SF って、何でしょう? 僕の考えでは、この設問について全ての人間を納得させうる回答は存在しません。 「サイエンス・フィクション」そのものが、「空想(フィクション)・科学(サイエン ス)」「科学(サイエンス)…

ラノラダの兄弟

閑話休題−−と、ここからが本題。 H・P・ラヴクラフト自身の口(というか筆)で、クトゥルー神話とペガーナ神話の結び付きについて直接的に言及されたことが1度、あったりする。 ラヴクラフトは、1930年10月7日付のC・A・スミス宛ての手紙の中で、次のように…

マアナ=ユウド=スウシャイ、夢見るままに……

[Twitterで連投したネタより転用] 2005年にケイオシアム社から刊行された『マレウス・モンストロルム(Malleus Monstrorum)』の書名は、おそらく15世紀の異端審問官によって書かれた『魔女に与える鉄槌(Malleus Maleficarum)』のパロディであろう。『怪物…

旧支配者? 古のもの?

『うちのメイドは不定形』で、「前の御主人」について「グレート・オールド・ワン」のルビを振ったことについて、若干の混乱が起きてる様子。ご自分で調べていただきたいところではありますが、過去原稿を流用しつつ軽く触れておきましょう。 ラヴクラフト作…

詳説「ダンウィッチの怪」お箸休め

現在連投中の「詳説ダンウィッチの怪」について、いくつか。 序章 AQUILA ARGENTEA(白銀の鷲) 第1章 ARKHAM CYCLE(アーカム物語群) 序章15KB、執筆に6時間。第1章33KB、執筆にほぼ序章の2倍。 着実に増殖しとりますね。平日に1日1時間程度時間をあてたと…

詳説「ダンウィッチの怪」第1章-3

ニューイングランド地方を背景とするラヴクラフトの小説作品は、多くの場合、その直前に彼が直接その地に足を運んだことが執筆のきっかけになっている。 不全麻痺を患い(実際には梅毒であったようだ)、精神に異常を来たしてプロヴィデンスのバトラー病院に…

詳説「ダンウィッチの怪」第1章-2

前述の『クトゥルー神話全書』において、リン・カーターは「ダンウィッチの怪」を〈ミスカトニック郡〉〈ラヴクラフト地方〉を舞台とする物語群の最初の一冊と位置づけた。 確かに、「クトゥルーの呼び声」はプロヴィデンスに始まる物語であはったが、ニュー…

詳説「ダンウィッチの怪」第1章-1

序章を読む[この詳説は、ラヴクラフト自身の手になる文書は当然ながら、リン・カーター、S・T・ヨシ、ドナルド・R・バールスン、竹岡啓はじめ先人たちによる研究成果を踏まえつつ、森瀬繚の独自研究に基づく見解を少なからず含んでいます。本稿の内容をWEBサ…

詳説「ダンウィッチの怪」第1章-4

さて、我々はかくの如くにして、ダンウィッチの地理上の位置をある程度特定することができた。この先に進む前に、最後に残された問題−−「ダンウィッチ」という名前について、解決しておかねばならないだろう。 ラヴクラフトが「ダンウィッチ」という地名をど…

詳説「ダンウィッチの怪」序章-4

しかしながら、疑問が残る。 果たして、ラヴクラフトは数年来温め続けたこのプロットを、これほどまでに深い愛着をもって繰り返し語ってきた構想を、本当に完全に破棄してしまったのだろうか−−。さて、筆者は読者諸兄諸姉の注意を喚起したい。 改めて、「古…

詳説「ダンウィッチの怪」序章-3

さて−−。『アエネーイス』中盤最大の山場とも言える第6巻、息子アエネーイスがイタリアの地で創りあげる新たな国−−ローマの運命について、老父アンキーセスが告げる予言に思いを馳せ(冒頭に掲げた引用はその一部)、街を覆うハロウィーンの賑わいに耳を傾け…

詳説「ダンウィッチの怪」序章-2

「古えの民」は、ラヴクラフトの死後、1940年にSFファンジン"Scienti-Snaps"第3号に掲載されたのが初出である。その後、1944年にアーカムハウスから刊行されたラヴクラフトにまつわる拾遺的な作品集"Marginalia(欄外)"に掲載されている。 日本では、福岡洋…

詳説「ダンウィッチの怪」序章-1

「おお見よ何と精力に、彼らは満ちてしかもなお、市民のほまれの樫の木の、冠巻いてその枝は、額の上に影おとす。汝のためにあれたちは、ノーメントゥムやガビイーや、フィーデーナ市を建設し、コルラーティアの高城や、ポーメティイーやイヌウスの、砦やポ…

大砲倶楽部宣言

2001年当時、今は亡き個人サイト(タイトルさえ思い出せない)に掲げていた大砲倶楽部日本支部の起草文を何となく貼っておきます。大砲倶楽部というのは、森瀬がコミクマーケットなどの活動で用いている個人サークル名です。 サークルとしての大砲倶楽部日本…

ナチス政権下の南極探検

(本稿は、コミックマーケット78にて刊行した森瀬の個人サークル誌『夏冬至点』2010年夏号掲載コラムの再掲です。本来、PHP研究所のコミック『狂気の山脈』に寄稿した解説文に含める予定だったものの、ページ数の都合で割愛したテーマを扱ったものとなります…

「クトゥルー神話」の由来について

あれこれ作業が立て込んでいて、日記を書く時間がなかなかとれませんが、大至急報告しておきたいことがありましたので取り急ぎ更新します。 今回新たに確認された事実によって、過去、森瀬繚の携わったクトゥルー神話関連書における記述が更新されることにな…

企画メモ「森瀬繚のラヴクラフトノミコン」

通常日記を更新する時間がなかなか取れないので、とりあえずメモとして投下。はてな日記(某サイト立ちあがった後はそちら)連載形式で、ひたすらH・P・ラヴクラフトの特定作品の詳説を貯めて行くプロジェクト。 PHP研究所クラシック・コミックス『クトゥル…

謎のメモ書き

帝国の影 エールズベリー街道を抜けて ミスカトニック大学の人々 ヨグ=ソトース、あるいは地下の神 異次元の怪物について 全5パラグラフ。

永井豪とクトゥルー神話(補遺)

早川書房『ミステリマガジン』1971年12月号〜1972年2月号に分割掲載されました矢野浩三郎氏の翻訳になる"Call of Cthulhu"について、1/21のエントリ中で下記のように記載しました。 この作品が初めて翻訳されたのは早川書房の『ミステリマガジン』。翻訳者は…

『アル・アジフ』について

H・P・ラヴクラフトは、「『ネクロノミコン』の歴史」と題する文章(文庫版全集5巻)の中で、『アル・アジフ』というアラブ語版の原題について、以下のように説明しています。 アジフは魔物の吠え声と考えられた夜の音(昆虫の鳴き声)を示すためにアラブ人…

『ジャーゲン』を読んだかもしれないスミス

先の日記で、ラヴクラフトが『ユリシーズ』と共に言及したという『ジャーゲン』に興味が湧き、今現在読み進めているところです。H・P・ラヴクラフトが「尊敬しているけれど、読んでも楽しくない」というキャベルの小説に興味が湧いたというよりも、この『ジ…

『ユリシーズ』を読まないラヴクラフト

話は変わって。 「speculativejapan」という日記にあがっていた「『ユリシーズ』を読むラヴクラフト−−ラヴクラフト再評価のためのノート」というタイトルのエントリについて、幾つか事実誤認が見られるようでしたので、別途、こちらで書いておくことにします…

はてな、Twitter運用方針

はてなのプロフィールを更新しました。バカ正直に告白してしまいますが、コメント欄をOFFにしているのは、エントリ毎に対応窓口が分散するのがひたすら面倒臭いからです。 トラックバックは受けつけておりますので、御自分の日記から同意/反論意見を投げてい…

読者への回答、あるいは新たな探求

「それは、何だかわかりますか?」 昨日の日記でこのように出題していたわけですが、今のところブログ、Twitterともに回答なし。ちょっとしょんぼりしつつ、お約束通り「僕なりの考え」を開示します。 そもそも、「ラブクラフトの〈クトゥルー神話〉ですね」…

余談・『ニーベルンゲンの歌』などについて

話は変わって。(次の更新というのは翌日の更新ということで!) 「限界小説研究会BLOG」という日記にあがっていた「映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作が切り捨てたもの」というタイトルのエントリについて重箱つつき的なコメントを投稿させていただい…

読者への挑戦!

永井豪氏はクトゥルー神話の影響を受けているや、否や−−。 時折、このようなやり取りを見聞きすることがあります。 日本の若い本読みに「クトゥルー神話」というものを周知させるにあたって大いに功績のある栗本薫氏の伝奇SF小説『魔界水滸伝』の挿絵を永井…

解説修正1点

クトゥルフの呼び声 (クラシックCOMIC)作者: ハワード・フィリップス・ラヴクラフト,森瀬繚,宮崎陽介出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2009/11/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 7人 クリック: 408回この商品を含むブログ (24件) を見る たいそう…

「弧の増殖」について

朝松健氏は、編集者・作家としてのキャリアを同人活動から始められました。国書刊行会の『真ク・リトル・リトル神話大系』の翻訳に関わったグループ「黒魔団」は、氏が1972年に立ち上げた怪奇・幻想小説の同人です。 朝松氏は「黒魔団」のみならず様々な同人…

千葉県夜刀浦市の新事件

2009年末に著作100冊を達成されたホラー作家の朝松健氏は、国書刊行会の編集者であった時代にクトゥルー神話作品集の刊行を手がけられたのを皮切りに、関連作品の執筆は元より、そうそうたる作家陣が一堂に会するパンデモニウム的アンソロジー編纂などなど、…

『クトゥルー神話全書』について

2010年中の木星到達はついに叶わぬ夢と消え去りましたが、ともあれ2011年がやって来ました。Happy New Aeon! 一瞬は永遠であり、365日もまた永遠です。皆様が1年後のこの日を健やかに迎えられますようにお祈り申し上げます。 さて、mixiで、この日記でといっ…