『邪神伝説 クトゥルフの呼び声』

 PHP研究所さんから、表紙のデザインをいただいた。
 公開OKとのことなので、早速貼り付けてみる。

 作画を担当された宮崎陽介氏は、このコミカライズが実質的なデビュー作品となる新人の方。
 内容的には、ラヴクラフトの原作をほぼそのままコミカライズしているので、アレンジされていると抵抗感が−−という原作至上主義者の方は一安心といったところ。
 3章構成になっていて、各章末に不肖森瀬による解説(全50P強)が掲載されている。何とも光栄なお話である。
 内容的には、H・P・ラヴクラフトが原作「クトゥルーの呼び声」を執筆するに至った略伝にはじまり、物語の舞台であるニューイングランド地方について。彼が追い求めた「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」についての解説がこれに続き、ラヴクラフトの死後、後継者を自認する作家たちによって展開された「クトゥルー神話」の概説をもって幕を閉じる。コミカライズされた本編の解説というよりも、ラヴクラフトとその作品世界についての独立した読み物になっている。
 いつもうんざりするぐらい繰り返している「キャラクター体系としてのクトゥルー神話」についてのカジュアル(笑)な云々とは切り口が異なる、あくまでも「ラヴクラフトの提唱する宇宙的恐怖」を主眼に記述したので、意外に思われる方もいるかも知れない。
 僕にとって、H・P・ラヴクラフトの作品と、彼の作品を主軸としつつ、それを包含する大集合としての「クトゥルー神話」は決してイコールでは結ばれていない。むしろ、ラヴクラフトの作風を真に「継承」しようとするならば、「クトゥルー神話」から離れていれば離れているほど良いと考えている。T・E・D・クラインの『復活の儀式』がその典型だ。僕がホルヘ・ルイス・ボルヘスの「人智の思い及ばぬこと」を決してクトゥルー神話作品にカウントしない理由ものそのへんにある。
 来客が待っているので、このあたりについては機会を改めて、またいずれ−−。

クトゥルフの呼び声 (クラシックCOMIC)

クトゥルフの呼び声 (クラシックCOMIC)

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

復活の儀式 上 (創元推理文庫)

復活の儀式 上 (創元推理文庫)

復活の儀式 下 (創元推理文庫)

復活の儀式 下 (創元推理文庫)

・2015年12月25日追記
 と、いうエントリを6年ほど前に書きましたが、その後、更にあれこれ見聞きしました結果、「クトゥルー神話作品にカウントしない」あたりの考えは大分変わっています。