クトゥルー神話

『宇宙(そら)の彼方の色』修正

6月17日発売の『宇宙(そら)の彼方の色』にて2箇所、初稿段階の訳注に修正を入れ損ねた箇所が見つかっております。P95 巻頭の地図ではこれを参考に推測的な位置を示した。→これを参考に巻頭の地図を眺めてみてほしい。 あまり意味がないと判断し、最終的に…

'Mi-Go'について

「ラブクラフトはチベット語の「Migou」を想像のアイディアにしたとしている。この語は現地で雪男、山岳部に現れる謎の類人猿のような妖怪という意味で使われる。ラブクラフトは『闇に囁くもの』の中でネパールの「Migou」とミ=ゴは、同一の存在であると設…

付記・魔術の神コズザール

ダニエル・ハームズは、"ENCYCLOPEDIA CTHULHIANA"の「Nodens」の項目において、おそらくは彼の独自設定として、リドニーのノーデンス神殿と結びつける形で「アトランティス人は魔術の神、Chozzar の名のもとに彼(=ノーデンス)を崇拝した」と提示していま…

マーブルヘッドのネプチューン

以前書いたエントリへの追記。 ノーデンスが登場する「霧の高みの不思議な家」の舞台は、ラヴクラフトが創造した架空の港町であるキングスポート。では何故、キングスポートがノーデンス顕現の場所とされたのか−−それについては、ひとつの私説があります。 …

『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』エラッタ

拙著『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』(SBクリエイティブ)の増刷に合わせ、大きめの修正事項(細かいてにをはミスではなく、情報としての誤謬)をエラッタとして公表します。 P023下3行目:誤「クトゥルー神話大全」、正「クトゥルー神話全書…

もしも、邪神と大魔術師がガチで戦ったら

こうなる、という良い見本。 マーベルの"Strange Tales"(第二期)の#14(1988年)にて、直前に戦った敵の力を吸収してスーパーサイヤ人じみた外見変化を起こしたドクター・ストレンジと、地球の命運を賭けて凄絶なバトルを繰り広げるシュマ=ゴラス。 その…

H・P・ラヴクラフトの元ネタ探し

Twitterでの過去の発言などを再利用しつつ、本日も更新してみます。「霧の高みの不思議な家」「未知なるカダスを夢に求めて」などのラヴクラフト作品に、その威厳に満ちた姿を現している〈大いなる深淵の王〉ノーデンス。 古代イギリスで崇拝された癒しの神−…

「関連作品・書籍を読む優先順位」についてのスタンス

クトゥルー神話の解説書・研究書を読む以前に、まずH・P・ラヴクラフトの作品(東京創元社『ラヴクラフト全集』など)を全部読むところから始めるべきでは、とのご意見を見かけました。 このあたりについての森瀬のスタンスは、以前、はてな日記に書いていま…

『グラーキの黙示録』の最新設定

ラムジー・キャンベルの〈最新作〉、"The Last Revelation of Gla'aki(グラーキ最後の黙示録)"をようやく入手しました。The Last Revelation of Gla'aki作者: Ramsey Campbell出版社/メーカー: PS Publishing発売日: 2013/06/01メディア: ハードカバーこの…

日本クトゥルー神学の黎明

『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』にはH・P・ラヴクラフトとC・A・スミスの書簡に基づく、クトゥルー神話の神々の系図を掲載しました。青心社の『クトゥルー』シリーズにも掲載されていますが、従来訳では「悪鬼のヨガシュ」と書かれていたとこ…

イタカの「素因数分解」

では早速、イタカの設定をソース単位で素因数分解してみましょう。 〈風に乗りて歩むもの〉〈歩む死〉〈大いなる白き沈黙の神〉〈トーテムに徴とてなき神〉など多くの異名を持つイタカは、星間宇宙を吹く風を渡るというハスターに従属する大気の神である。 …

〈風に乗りて歩むもの〉

この記事は、ひとつ前のエントリの続きとなります。 さて、今更申し上げるまでもなく、「クトゥルー神話」という巨大な雲の如きデータベースを構成するワードの数々も、数多の作品中に含まれる断片的な情報がなんとなく関連づけられて、蜃気楼のようにもやっ…

〈眠れる、やがて起きあがるもの〉

"The Resurrection of Nicholas Scratch(ニコラス・スクラッチの復活)"は、マーベル・コミックス社刊行の"Marvel Knights 4"誌の#25から#27にかけて掲載されたエピソードです。Fantastic Four作者: Roberto Aguirre-Sacasa,Mizuki Sakakibara出版社/メーカ…

マーベル・ユニバースの邪神

つい先日、シュマ=ゴラスが"Mighty Avengers #2"に登場したという話題がTwitter上で流れました。 シュマ=ゴラスは、マーベル・コミックス社(アメコミの老舗)の作品中に登場する、クトゥルー神話をモチーフとする邪神です。マーベル・ユニバース最強クラ…

クトゥルー神話の予習テキスト

出題範囲などについて解説されるらしい『クトゥルフ神話検定 公式テキスト』が、8月24日に新紀元社から発売されるようですが、この機会にみっちりと勉強しておきたいという方は、『クトゥルー神話全書』『H・P・ラヴクラフト大事典』『ゲームシナリオのため…

「神話検定」を歓迎する理由

既にトークイベントやTwitterなどであれこれ言及しております、まさかの「第1回 クトゥルフ神話検定」の受付が始まっています。試験日は12月1日。3級、2級と初級・中級の試験がありまして、併願も可能とか。第1回 クトゥルフ神話検定 http://www.kentei-uket…

『南極文書』再編集小冊子配布決定!

H・P・ラヴクラフトの命日合わせで、この3月15日(金)に阿佐ヶ谷ロフトにてトークイベント「邪神忌」が開催されます。阿佐ヶ谷ロフトA 「邪神忌」予約ページ 出演は僕こと森瀬繚と、ライター&ゲームデザイナーの朱鷺田祐介氏といういつものコンビ。これに…

〈ヨス=トラゴン〉設定についての覚書(後篇)

5・CoC向け〈ヨス=トラゴン〉試用版 朝松作品の設定を元に、『クトゥルフ神話TRPG』での使用を前提とした、ヨス=トラゴンの設定を暫定的にまとめてみる。ご活用いただければ幸いだ。クトゥルフ神話TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)作者: …

〈ヨス=トラゴン〉設定についての覚書(中篇)

朝松先生のクトゥルー神話×ナチス連作『邪神帝国』が、このほど創土社のクトゥルー・ミュトス・ファイルズにて復刊されました。これを記念して、同人誌『夏冬至点』2011年冬号に掲載した拙稿「〈ヨス=トラゴン〉覚書」を、一部誤字などを修正した上で全文公…

〈ヨス=トラゴン〉設定についての覚書(前篇)

朝松先生のクトゥルー神話×ナチス連作『邪神帝国』が、このほど創土社のクトゥルー・ミュトス・ファイルズにて復刊されました。これを記念して、同人誌『夏冬至点』2011年冬号に掲載した拙稿「〈ヨス=トラゴン〉覚書」を、一部誤字などを修正した上で全文公…

『イース』シリーズとクトゥルー神話

去る12月13日、星海社さんから刊行されたアンソロジー『イース トリビュート』に参加させていただきました。早々に参加が決まった芝村裕吏氏、海法紀光氏、そして同じく星海社で『那由多の軌跡』のノベライズを予定している土屋つかさ氏からの多重推薦を受け…

サラ金から再び参りました

かつて、日本最初のH・P・ラヴクラフト作品集である『暗黒の秘儀』、そして1巻と4巻のみが刊行された荒俣宏氏の編集になる『ラヴクラフト全集』、のみならずC・A・スミスの作品集なども刊行したことから、いっときは「日本のアーカム・ハウス」と呼ばれたこ…

イカモノ料理人、三たび現る

来る12月22日、菊地秀行氏のクトゥルー神話怪作『妖神グルメ』が、日本人作家によるクトゥルー神話小説レーベル「Cthulhu Mythos Files」の2冊目として創土社さんから発売されます。 神保町の書泉ブックマートでは20日の内に店頭で先行販売が始まり、本日開…

クルゥ・スルゥ!

8月末に、映画雑誌『映画秘宝』の刊行元である洋泉社から、ムック『別冊映画秘宝大宇宙映画超読本 「エイリアン」「プロメテウス」驚異の世界』が発売されました。別冊映画秘宝大宇宙映画超読本「エイリアン」「プロメテウス」驚異の世界 (洋泉社MOOK)作者: …

2012年におけるクトゥルー神話ブームについての所感

フリーペーパーR25のweb媒体である「web R25」さんに、「クトゥルフ神話ブーム」についてコメントを求められました。記事の方はこちらにあがっていますが、実際に回答した内容を見てみたいというリクエストがありましたので、転載してみます。(質問文につい…

ラノラダの兄弟

閑話休題−−と、ここからが本題。 H・P・ラヴクラフト自身の口(というか筆)で、クトゥルー神話とペガーナ神話の結び付きについて直接的に言及されたことが1度、あったりする。 ラヴクラフトは、1930年10月7日付のC・A・スミス宛ての手紙の中で、次のように…

マアナ=ユウド=スウシャイ、夢見るままに……

[Twitterで連投したネタより転用] 2005年にケイオシアム社から刊行された『マレウス・モンストロルム(Malleus Monstrorum)』の書名は、おそらく15世紀の異端審問官によって書かれた『魔女に与える鉄槌(Malleus Maleficarum)』のパロディであろう。『怪物…

旧支配者? 古のもの?

『うちのメイドは不定形』で、「前の御主人」について「グレート・オールド・ワン」のルビを振ったことについて、若干の混乱が起きてる様子。ご自分で調べていただきたいところではありますが、過去原稿を流用しつつ軽く触れておきましょう。 ラヴクラフト作…

ナチス政権下の南極探検

(本稿は、コミックマーケット78にて刊行した森瀬の個人サークル誌『夏冬至点』2010年夏号掲載コラムの再掲です。本来、PHP研究所のコミック『狂気の山脈』に寄稿した解説文に含める予定だったものの、ページ数の都合で割愛したテーマを扱ったものとなります…

「クトゥルー神話」の由来について

あれこれ作業が立て込んでいて、日記を書く時間がなかなかとれませんが、大至急報告しておきたいことがありましたので取り急ぎ更新します。 今回新たに確認された事実によって、過去、森瀬繚の携わったクトゥルー神話関連書における記述が更新されることにな…