彼女の、凄い、生足

 お蔭様をもって、『萌え萌えクトゥルー神話』はここ2日ほどamazonランキングを常時40-60位でキープという、なかなかの売れ行きの模様。日本国内随一のこの道の研究家であり、森瀬がこのテの怪しい企画を思いつくたびに有形無形の御協力をさせているいただいている竹岡啓氏(id:Nephren-Ka)は、ひたすら萌えクトのネット上での評判を巡回しているとのことで、昨晩も「つまらん。タールを塗られて火をつけられる森瀬さんを見たかったのに!」「人間松明になる森瀬さんを見たかったのに!」といった具合の温かいエールをいやってほどいただいた。そうかー、奥付に名前載せられたのがそんなにいやだったかー。計算通り。^(;,;)^
 さて、同じくお世話になっている赤虫療養所さんからも「羊の皮を被った狼」という有難い評価をいただいたわけであるが、触手美少女白濁汁ぶっかけとまで行かないまでも、何年も前にこの方向のコンセプトの表紙を掲げた書籍を企画・制作したことがある。
 読者諸兄諸姉は、『クトゥルー神話ダークナビゲーション』という本を御存知だろうか。

クトゥルー神話ダークナビゲーション

クトゥルー神話ダークナビゲーション

ちょっと表紙で敬遠していたんですが、買ってみたらすごい良作でした。
デモンベインの作者さんインタビューからはじまり、ネットゲーム88〜蓬莱学園とか芝村祐吏・友野詳インタビューとか激突!ルルイエ軍団vs海上自衛隊架空戦記とか。いったい誰をターゲットにしているんですか。俺ですか(笑)
「まりおんのらんだむと〜く+」さんより

 他にも数件、こういった評価を眼にしている。
 発売から3年が経過して、このような高い評価をいただけるのは大変に嬉しいことなのだけれど、この冒険的な表紙を2006年の時点でぶつけるのは、やはり早すぎたのだろうかと何度目かの自問をした。いや、後悔はしていない。後悔などするものか!
 プライベートの飲み会などではちょくちょく話していたが、この本はある種の怒り(このあたりについてはまた後日)に駆られた僕が、制作期間およそ1ヶ月半という今思えば無茶なハイスピードで制作したものである。編集にあたっては、ライティング・スタッフにこのような指示を徹底していた。(内山靖二郎氏にお願いしたTRPGサプリメントの紹介については、好きに書いていただきたかったのでこの指示はナシ)

  • 登場する邪神やクリーチャーについて触れるなど、あくまでも「キャラクターもの」という切り口での作品紹介を行う。
  • コンシューマ層はまだまだホラー映画については抵抗が強いので、実写映像作品については原則的に触れない。
  • 同様の理由で「暗黒」だの「恐怖」だの「おぞましい」だのといったワードを極力避ける。


 こうしたコンセプトのもとに編集されたガイドブックが、怪奇幻想文学方面の古くからの読み手の共感をなかなか得られないのは当然なので(そもそも彼らとは異なる読者層を想定した企画なのだから、そうでなくては困る)、表紙を思いっきり美少女系にするというのは、いわば「ネズミ返し」として企画段階から織り込まれていたものだった。
 それにしても、表紙イラストを担当していただいた野上武志氏のノリっぷりは凄まじく、実は「あの表紙」ですらも手心が加えられている。野上氏の許可が得られたので、プロトタイプの表紙イラストとラフをここに公開しよう。どーん。




 実に健康的な生足ではないかッ。流石の僕もほんのちょびっと躊躇して(いちじくの葉っぱは、誰の心にもあるというわけだ)、最終的にスカートと白パーカーを追加していただいたのだけれど、最初は「ここまで」やるつもりだったのだ。
『ダークナビゲーション』は、クトゥルー神話関連書コーナーのある大型書店の以外ではなかなか見つからない書籍なのだけれどamazonでまだまだ購入できるので、TRPGから入った方や、『機神咆吼デモンベイン』や『這いよれ!ニャル子さん』でクトゥルー神話に興味を持たれたような方は、是非とも手にとっていただければと思う。
 怪奇小説からクトゥルー神話に入ってきた日本の読者の中には、「クトゥルー神話の本流はあくまでも小説、ゲームの設定などを軽々しく持ち込むのは宜しくない」という方が少なからず存在するようで、WEB上でもそのような言説を時折見かける。では、本当に昔からの読者がその辺りについてこだわっているのかというと決してそういうことはなく、むしろ最近(少なくとも青心社の文庫版以降)の方がその傾向が強いように思えてならない。例えば、大瀧啓裕氏はかなり早い段階からゲーム方面での展開に注目されていたし(ゲームブックまで手がけられているのだから)、朝松健氏もそうした動向を歓迎されていたのにも関わらず、である。
 実際の話、ホビージャパンTRPGクトゥルフの呼び声』を展開していた頃、最盛期で10万人のプレイヤーがいたと複数箇所から聞き及んでいる。ゲームユーザでいえばサターン版『黒の断章』とPC/PS2の『斬魔大聖デモンベイン』がやはり10万タイトルだ。これらの作品から「クトゥルー神話」そのものにハマった人間が2、3割程度だとしても、関連書籍の読者の数よりも遥かに多くの人間に影響を与えているはずなのだ。
 80年代の日本におけるクトゥルー神話の本流が『魔界水滸伝』だったとすれば、90年代以降はゲームだった−−と言い切るのは早計かも知れないが、ともあれ。「ゲームから入ってきた」という人はもっと胸を張り、堂々とクトゥルー神話への愛を口にして欲しい。
 あなたがた、若き読者たち(ダークヤング)のために、ドズル・ザビ中将のこの言葉を捧げよう。


「戦争は数だよ、兄貴」


 まあ、質量に負けちゃった人なのだけど。東方先生ならぬ身でMSに白兵戦を挑むのは、無茶でしょ。;-p