「神話検定」を歓迎する理由

 既にトークイベントやTwitterなどであれこれ言及しております、まさかの「第1回 クトゥルフ神話検定」の受付が始まっています。試験日は12月1日。3級、2級と初級・中級の試験がありまして、併願も可能とか。

第1回 クトゥルフ神話検定
http://www.kentei-uketsuke.com/cthulhu/introduction.html

 企画・運営は日販(日本出版販売株式会社)さん。日販さんはこれまでにサブカル系の検定試験を数多く行ってきたようで、ここ最近のあれこれの動向から「クトゥルー神話の検定もそろそろ……」というお話になった模様です。そこで、拙著『図解 クトゥルフ神話』など、何冊かの関連書を刊行している新紀元社さんに協力依頼が飛び、朱鷺田祐介氏が監修・出題を、『ナイトランド』編集部が公式テキスト制作を−−という流れになったと聞いています。
 申し込みページでは3級・2級の練習問題も公開されておりますので、とりあえずどの程度のグレードの知識を要求されているのかについては、こちらで確認することができます。
クトゥルー神話研究家」の看板を掲げ、関連書の著者でもある森瀬繚としては、以下の理由からこの「クトゥルフ神話検定」を歓迎したいと思います。

  1. 「検定のための勉強」は、出典であるところのクトゥルー神話作品(小説、漫画、映画、アニメ、ゲーム、何でもよし!)と直接触れる動機となる。
  2. 「勉強」の過程での、基礎知識の底上げ。この機会に、「ラヴクラフトは引きこもりだった」「クトゥルー神話って言い出したのはダーレスで、ラヴクラフトは無関係」だのの黴臭い言説が風化してくれるのではないかという期待感。

 むろん、大変だなあと思える面もあります。クトゥルー神話というのは、それこそ作家ごとですらなく、作品ごとに設定が変動するもやっとしたシロモノで、「これ」と定まった設定を設問にするのが難しい。ホントに難しい。例えば、「クトゥルー神話の創造者」にまつわる設問があったりします。これ、正解はH・P・ラヴクラフトだけではなく、関連作品を発表した人間全員になるはずなのですね。
 特定設定について設問にする場合も、特定作品(しかも、稀に版によって違っていたりする)を掲げた上で、「この作品においてこれこれをしたのは何か」みたいな設問にしないと、一つの回答と結びつけることができません。記述式の試験だと、採点者が漏れなく死にます。幸い、今回の検定は選択式のようなので、そうした危惧はありません。