旧版との差分

 以下、旧版を既にお持ちの方向けに、具体的な差分を中心に内容を紹介させていただきます。

 旧『「天使」がわかる』『「堕天使」がわかる』(ソフトバンク文庫)を再編集し、同時に増補改訂したものです。
 堕天使本を出した段階ではシリーズが続くことを想定していなかったこともあり、天使本は堕天使本に含まれる一部項目の追加差分も兼ねておりました。今回、改めて「天使」「堕天使(悪魔)」に項目を分けた上で、新規項目の追加を行っています。
『いちばん詳しい「天使」がわかる事典』の増補改訂内容は次の通りです。

  • 旧版の「ルシフェル」はラテン語読み準拠の「ルキフェル」、『光輝の書(ゾハール)』は『光輝の書(ゾーハル)』、また「神」の語につけていた「ヤハウェ」のルビを一部例外を除いて取り外すなど、用語周りの調整。
  • 『「天使」がわかる』から堕天使関連項目をオミット。堕天使そのものについて解説する「堕天使・悪天使」の項目を新たに追加し、『いちばん詳しい「堕天使」がわかる事典』とは異なる内容の「ルキフェル」項目を追加。また、「アイオーンとアルコーン」の項目は分割せず、アルコーンについても本書で扱う。
  • 『「堕天使」がわかる』で扱っていた「サリエル」について、改めて一次資料を再検証の上、こちらで新規に書き起こし。
  • 新規項目「天国/煉獄/地獄/ライラ(『はたらく魔王さ……もといユダヤ伝説)/エレレート(グノーシス文献)/マンダ・ダイエー/プタヒル/ウルとルーハー(以上3項目マンダ教)/ナハシュバト、光のアダマス(以上2項目マニ教)/マラク・ターウース(ヤズィーディー)/モロナイ(末日聖徒イエス・キリスト教会)/コロンゾン(エノク魔術)/スピリチュアリティの天使」を追加。
  • 新規資料の導入による全体的な情報のアップデート。
  • コラム「キリスト教圏の死神」を追加。

『いちばん詳しい「堕天使」がわかる事典』の増補改訂内容は次の通りです。

  • 『「堕天使」がわかる』に、『「天使」がわかる』の堕天使関連項目を移動、マージ。
  • 旧「マモン」項目については、エリザベス朝時代の英文学におけるマモンの情報を反映させるため、ほぼ書き直し。
  • 新規項目「ライトボーン/ルキフグス/サタナキア/アガリアレプト/サルガタナス/ブズラエル/デモゴルゴン」を追加。
  • 魔術書『ソロモンの小さき鍵』に基づくソロモン王七二柱の魔神(第二章)については、9割方書き直し。
  • 新規資料の導入による全体的な情報のアップデート。
  • ソロモン王由来の魔術書の原点とも言える旧約偽典『ソロモンの誓約』に登場する堕天使/悪魔たちをコラム(三分割)の形で紹介。
  • ローマ・カトリックの悪魔祓いについて、コラム「エクソシズム」で紹介。

『いちばん詳しい「北欧神話」がわかる事典』『いちばん詳しい「ケルト神話」がわかる事典』については、旧版との項目的な変動はありません。もちろん、全体的な加筆を行っておりまして、旧版ではちょろっとしか触れられなかったゲイ・ボルグやレーヴァテインがらみなど、取りこぼしていた情報を可能な限り突っ込みました。中にはほぼ全部書き直した項目もあります(ケルト神話本の「ラーンスロット」項目、『オシァン作品集』にまつわるコラムなど)

 実際のところ、中近世のキリスト教圏の文学(詩、散文)なり演劇なり美術なりを眺め渡すと、天使・悪魔のみならず運命の女神だの死神だのといった「神々」がひしめく、「一神教」のイメージから離れた汎神話的世界が広がっておりまして、有名どころではダンテ・アリギエーリの『神曲』、ジョン・ミルトンの『失楽園』など、グレコ・ローマンの神々なり英雄なりをうまいことキリスト教宇宙観の中に配置しようとする試みが繰り返されてきました。『侵略の書』がアイルランドの神話、『ゲスタ・ダノールム』が北欧の神話でそうしたように。
 その一端について、天使事典ではコラム「キリスト教圏の死神」、堕天使事典では「デモゴルゴン」項目で多少触れてはおりますが、まだまだ書いていないことがたくさんあります。このあたりについても、いずれ何かしらの形でまとめてご紹介してたいですね。

「あれ、クトゥルー神話はないの?」
「『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』の2刷が2月中に出回りますので、そちらをどうぞ」