千葉県夜刀浦市の新事件

 2009年末に著作100冊を達成されたホラー作家の朝松健氏は、国書刊行会の編集者であった時代にクトゥルー神話作品集の刊行を手がけられたのを皮切りに、関連作品の執筆は元より、そうそうたる作家陣が一堂に会するパンデモニウム的アンソロジー編纂などなど、数多くの熱心な出版活動を通して、日本国内における「クトゥルー神話」の普及に尽力されてきた功労者の一人です。現在では、海外でも認知されている数少ない日本人クトゥルー神話作家であり、書き下ろし作品が昨年4月刊行のアンソロジー"CTHULHU'S REIGN"に収録されています。
 中でも、氏の音頭とりで1999年に刊行されたアンソロジー『秘神』は、アンソロジーの共通の舞台として「日本のアーカム」となるべき地方都市「千葉県夜刀浦市」を設定するユニークな試みでした。残念ながら、この「夜刀浦市」周辺の情報については、朝松氏の作品中でごく稀に言及される程度で、その後長らくクローズアップされませんでした。幸運にも、森瀬が『図解 クトゥルフ神話』で「夜刀浦市」を引っ張り出したのがきっかけとなり(項目執筆者は、『秘神』に参加された作家の立原透耶さん)、新紀元社/アークライトのTRPG雑誌『Role&Roll』vol.20にて、朝松氏の設定ノートをもとに不肖・森瀬が『クトゥルフ神話TRPG』向けのミニサプリメントとして、夜刀浦市の設定を掘り下げさせていただくという機会をいただきました。

Cthulhu's Reign

Cthulhu's Reign

 さて、前置きが長くなりましたが−−来る1月31日、朝松健氏の最新作『弧の増殖』が、エンターブレインから刊行されます。

弧の増殖 夜刀浦鬼譚

弧の増殖 夜刀浦鬼譚

「夜刀浦鬼譚」というサブタイトルが示すとおり、千葉県夜刀浦市を舞台とする新しい作品となります。たいそう恐れ多いことに、魔夜峰央さん、平山夢明さんに並んで帯文を寄せさせていただいております。大した言葉もひねり出せずに申し訳ないことでしたが、御依頼を受けた時はプレッシャーの余り失禁寸前でしばらく編集さんへの御返事ができないぐらいでした。
 情報公開の折、朝松先生のブログを覗きに行ってみたら何やらすごいことが書いてあったので、ガクブルの体で御祝いのご連絡を兼ねてお電話を差し上げたわけですが、「お、おおおおお怒ってなんかないっすよー!」「わかってますよー、ちょっと装飾しただけじゃないですかー(笑)」といった微笑ましいやり取りの後、タイトルにまつわる興味深いお話を聞くことができましたので、Twitterに引き続きはてなの方でもご紹介します。